After The Burial "The Carry The Flame Tour" Atlanta Show REVIEW

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忘れもしない、2015年の夏。そしてそこから返り咲くかのように、突如その秋に発表された"Lost In The Static"という曲。2016年の2月19日に最新作Dig DeepをリリースしたAfter The Burial。間違いなくこの作品は、これまでの彼らの名に恥じぬ最高のアルバムであり、彼らの表舞台への帰還を心から喜んだファンも多かったことだろう。2016年内に数本のツアーをこなした彼らが、遂に2017年EMMUREとのヘッドラインツアーをスタートさせた。

 

実は前回彼らのショーを観たのは、昨年開催された所属レーベルSumerian Recordsの10周年ツアー。フルセットでの彼らのショーをどうしても見たい、と都合の合う日程を調べチケットを購入したのは昨年末の事である。その後同日にFit For An Autopsyが出演するという事を知り、結果的に取材での参加が許可されたこのアトランタ公演。他のバンドの事が一切目に入らず即決でチケットを購入して行く事を決めた私に、海外に住む友人達が呆れたように笑っていたのを覚えている。

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ツアーのセミファイナルとなった、3月22日アトランタ公演。4バンドのステージが終了し、残るはトリのAfter The Burial。既に転換中のステージセッティングを見ながら感極まっていた私を見て、仲良くなったセキュリティの会場スタッフが笑っていた。

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会場が暗転し、地響きのようにドスのきいた歓声が飛び交う。以前見た10YEARSでも感じた事だが、彼らのショーになるとフロアの8割が暴れる準備万端とギラギラした男性陣で埋め尽くされるような気がする。そんな硬派で危険な、まさに一番の武器は自身の放つ音だと言わんばかりの印象を受けるAfter The Burial。嫌いじゃない、寧ろこの空間こそ私の大好きな場所だ。

Danがドラムセットの前に座ると、静かな前奏が流れ出す。それに合わせゆっくりとベースのAdrianとギターのTrentがステージに登場。印象的な音色のギターソロをTrentが紡ぎ始め、Dig Deepの代表曲とも言えるLost In The Staticがスタート。叩きつけるような轟音の中、ヴォーカルのAnthonyがゆっくりとフロアを睨みつけるようにステージ中央へ現れる。歌い出しからファンが一斉に合唱し、フロアはトップギアをいきなり入れたかのような盛り上がりを見せた。しかし、ここで1曲目のサビ終わりに突然曲が止まってしまう。

『ヘーイ!どうしちまったんだ!?』

Anthonyの声にステージの後方からDanが『同期がオチた!』と叫び返す。

人懐っこさのある新メンバーAdrianはあちゃーと困ったように笑い、Trentは呆れたように肩を竦めている。

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機転を利かせたAnthonyがここで『本当にあった、真実の"クソみたいな"話』を披露しフロアが爆笑と失笑とFワードに包まれる中、Danはテックスタッフと一緒に必死に同期機器を回復させていた。

『よし、もうイケるそうだ。…ところで、俺入場するところからやり直していいか?』

Anthonyの言葉にまたもやファンは爆笑。Lost In The Staticが前奏からしっかり演り直される中、轟音に合わせて再び恐ろしい顔を作りながらゆっくりと登場するAnthonyがカッコよくもあり、また一際シュールな光景でもあった。"Make some Noise!!"そう叫ぶAnthonyに応え、多くの声と共に手が挙がる。

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そのまま目まぐるしいテンポの変化が襲い掛かってくるDig Deepの1曲目Collapseへ、ひっきりなしに駆け抜ける音とは別にメンバーはお立ち台の上に仁王立ちしている姿がまた迫力満点。Anthonyの低く迫力のあるシャウトも合わさり、さっきまで笑顔を見せていたメンバーが嘘かと思うほどそのステージはバケモノじみている。動きが特別派手なわけでも、何か特徴のあるパフォーマンスをするわけでもない。静と動、その中でただひたすら音が襲い掛かってくる、鳩尾にストレートを打ち込んでくるかのように響く、この音圧のバケモノっぷりがたまらない。

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『準備はいいかお前ら!クラウドサーフ!クラウドサーフだ!』ドゥーンという独特なダウン気味の機械音からリズミカルなドラムと共に始まったのはAnti Pattern。曲が始まるとそこはまるで地獄絵図、目がチカチカするような激しい明暗のストロボライトの中、止まることなくクラウドサーフが乱立。慌てたセキュリティがステージ前に隙間無いほど集結する事態となった。これはもう柵の前で撮影どころではない、セキュリティに腕を掴まれ安全なサイドで待機させられることに。メインのギターリフやソロがとてもかっこいい曲だが、フロアの荒れ具合は尋常ではない、思わずAnthonyも笑顔で"Holy shit!"と洩らす。

『最高だなお前ら、皆手を挙げてくれ!調子はどうだ?俺達はミネソタ州ミネアポリスのAfter The Burialだ。いいね、今日はもう滅茶苦茶になって暴れて楽しんでくれ。まだまだ今日はお前らに聴かせたい曲があるんだ、次の曲が始まったら全員でモッシュだ、隣の奴を押しまくって…そんでもってこの会場全員もみくちゃになって友達になってくれ、いくぞ!』

Troublesが始まると一斉にフロアでは皆が笑顔で隣と押し合い、波のようになる。うねるように押し寄せてくるAfter The Burial特有の分厚い低音と、時折混ざり合ってくるTrentのカン高いギターのメロディが良いエッセンスとなって、情報量の多すぎるような細かくてヘヴィな重低音の中でも飽きがこない。そのまま、暗闇に光が差し込んでくるような美しく明るい音色のギターソロから始まるAspirationをプレイ。

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『全員跳べーっ!!』Anthonyの合図でオーディエンスは一斉に高くリズムに合わせジャンプ、前奏の優しいメロディは何だったのかと思うほどのガリガリとした切り刻むようなカッティング、そこからのギターソロという展開はもう感動モノ。Anthonyの力強い声も見事にマッチし、Danのパワフルなドラミングもその展開をしっかりと支えている。ラストのパートではモッシュピットがさらに巨大化し、無法地帯と化していた。

『本当に最高だな、最高な夜だよ。皆来てくれてありがとう。次はDig Deepからまた1曲演ろうと思う、ツーステップ、サーフ、皆で飛んで跳ねて、リズムに合わせてスラミングだ。無法地帯にしてくれ』

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ロディアスな前奏からDelugeがスタート。これまでのAfter The Burialの楽曲からすると、ややメロディのパートが多いようにも感じるだろう曲だがこのギターのメロディがまたニクい。個人的にDig Deepの中でも特に気に入っている1曲でもある。それが映えるように下をしっかりと支えるベースのリズム、そして思わず手を挙げリズムをとったり踊り出したくなる曲調とAnthonyの煽り、Adrianの楽しそうなプレイがまた微笑ましい。Danのびしりと叩きつけるシンバル音と大歓声と共に曲が終了、会場はここで一旦真っ暗に。

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暗闇の中、穏やかなギターの音色が流れるインスト曲Pi(The Mercury God of Infinity)が。そして再び静けさが訪れると、今度はステージ上にセットされたライトがチカチカと点滅、両サイドのお立ち台に上り打楽器のような音を奏でる弦楽器2人。まるでショーのように色鮮やかに繰り広げられるライトの中、再びAnthonyが登場しA Steady Declineをプレイ。近年の作品に見られる彼のヴォーカルスタイルからすれば、珍しいグロウルのようなパートもあり聴いていて新鮮。楽器隊が目立つバンドでもあるが、やはり彼でないとAfter The Burialのヴォーカルはつとまらない。ブレイクダウン、そして全員がジャンプするリズミカルなパート。フロアは休む暇なく、ピットの中にも人が溢れていた。

『皆ありがとう。そしてこのツアーをサポートしてくれた仲間達、バンドの皆にも感謝しているよ。ちょっと古い作品から2曲やったけど次の曲もまた昔の作品からだ、皆一緒に歌ってくれ。次の曲は…Fingers Like Daggers

サビではオーディエンスが手を挙げ、大きくシンガロング。再び曲調が激しいものになると、モッシュピットの中の動きも更に加速する。この曲でも再びAnthonyがグロウルを披露し、変拍子とはまた一味違うひたすら速いDanのドラミングがまた素晴らしい。

そしてここでふとあることに気がついた私はカメラを抱え、モッシュピットの勢いが直撃する前列付近へ。そう、Trentが見覚えのあるグリーンのギターを弾いていたのだ。

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わかる人には一目でわかったと思う、彼がこのグリーンのIbanezをステージで弾いているということがどんな事なのか。耐えられずにカメラを降ろしぼろぼろと涙を流す私に、『大丈夫?どこかぶつけた?』と聞いてくるモッシャーの皆が優しかった。

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『皆今日は本当にありがとう。あと残り3曲だ、3つのアルバムから3曲だ。準備はいいか?サークルピット、もっともっとだ!まわれ!!』

目を見張るほど速いギターリフからスタートするBerserkerだ。その展開は驚きの連続でしかない。この曲を昔ネットで見つけ、何度も夢中になって観たのを思い出していた。今はもうステージにいるギタリストはTrentただ1人。兄弟のようにフザケながらバカテクプレイをさらりとこなす2人の8弦プレイヤー、その光景を見るのが大好きだった。しかしTrentに重なってもう1人の姿が浮かんでくるような、不思議な気分になる曲だった。中盤のダンサブルなパートではメンバーもステージ上で跳び、それに合わせてフロアも大きく波打った。ここでまた魅力的なギターリフからスタートするCursing Akhenatenをぶちかます。ダレる部分の一切ない、攻めに攻めた選曲の数々。手拍子、ジャンプ、ヘッドバンキングモッシュピットで暴れている者だけではない。ステージから放たれるエネルギーに全力で返すオーディエンスの姿がまた凄まじい。

『ありがとう。皆と一緒にここでショーができた事、そして皆が来てくれた事が心から嬉しい。これまでの一ヶ月間、サポートしてくれたバンドの皆と仲間達にも本当に感謝してる、皆本当にありがとう。最後にあと1曲、あと1曲だ!皆声出してくれ!』

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大歓声の中、彼らの代表曲の1つA Wolf Amongst Ravensがスタート。バンドのテンションやパフォーマンスもだが、ここにきてなおモッシュピットの勢いは止まらない。壮大な曲調の中、細やかな鋭い音が鳴り響く。激しくもあり、それでいて少し悲しさを含むような独特の音色、脳を直接揺らしてくるような音達。

『皆ありがとう!俺達がAfter The Burialだ!!』

Anthonyやファンへお礼を言うAdrianの声がかき消されるほどの大歓声の中、メンバーはステージを一度後にした。

 

 

すぐに起こった大音量のアンコールの中、再びメンバーがステージに姿を現す。

『よっしゃわかった、ワンモアだ!もう一曲、演らせてもらうよ。皆本当にありがとう。そして今からやる曲は俺達にとって本当に特別な曲なんだ。Dig Deepに収録されている曲だ。この曲を演する度に感じてほしい。そう、俺達のもう一人のギタリストJustinは"永遠に"俺達の曲の中に生きている、ずっと存在してるんだ』

Justinの名前が出ると、会場が一気に沸いた。そう、確かにDig Deepの中で1曲、不思議な曲があった。少なくともあのアルバムを手に取り、初めて聴いた時私はそう感じた。それがこのLaurentian Ghostsという曲だ。激しい曲調、Anthonyの力強い咆哮はそのままに、ゆったりとした哀しく儚い音色が含まれている。Ghostという言葉の含まれたタイトルや切なさを感じさせる歌詞に、憶測でしかないものの色々と考えてしまっていた曲を、この日のアンコールで初めて目の前で観ることができた。これまで、彼らの口からショーの中でJustinの名を聞くことはなかったように思う、少なくとも10YEARS IN THE BLACKの時はそうだった。冒頭のトラブルの際にAnthonyが語ったフザケ話の途中でも『俺達のギタリストのJustinがさ、』と当たり前のように笑顔で語る姿に、ドキリとしたものだ。きっとこれはフルセットのライブでしか聴くことのできなかった曲でもあったんだろう。最後の最後に更なる大きな感動をファンの心に焼き付け、After The Burialのショーは拍手と歓声の中、メンバーのにこやかな笑顔と共に終演した。

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【Set List】

・Lost In The Static

・Collapse

・Anti Pattern

・Troubles

・Aspiration

・Deluge

・PI

・A Steady Decline

・Fingers Like Daggers

・Berserker

・Cursing Akhenaten

・A Wolf Amongst Ravens

[encore]

・Laurentian Ghosts

 

 

 

After The Burial。私の最も大好きなバンドの1つでもある。

その実力、音楽性は間違いなく他と一線を画しており、初めて生でショーを観た時、その凄さに思考が完全に停止してしまっていたほどだ。

レビューの中でも触れたJustin Loweという人物は、Trentと共にこのバンドを作り上げた名ギタリスト。これまでの作品のプロデューサーもJustinとTrent自身がつとめてきたと聞いている。8弦が2人?しかも色が凄い、曲も凄い、ギャグにも全力…一体何なんだこの人達は。そんな印象があったのを覚えている。そんな彼は2015年の7月下旬、突然この世を去ってしまう。愛するバンドのメンバーが亡くなってしまう事は、これまでにも何度か経験してきたが、Justinの死はその中でも特に悲しくて悔しいものだった。

 

好きなバンドのショーを観る事を「一生に一度でいいから」と願っていたほど、音楽の現場とは縁が無かった昔の自分。こうして大人になり、数々のショーを観に行くようになり、現場に関わる身にもなった。遅かった…とは言いたくない。けれど、どれほど努力しようと私が大好きなツインギターの揃った姿を目の前で観る事は一生叶わない。

のめり込む事とはまた違う、神格化するのもちょっと違う。ただ、私が言いたいのは"その人達が好きなら、絶対に後悔だけはしないでほしい"という気持ち。そんな人達の言葉を届け、またバンドからの声を言語の違う自分の国の人達へ届けたい…それが私の今の活動の原点でもある。

 

話は逸れたが、このアトランタ公演の終演後、Fit For An Autopsyのメンバーと話している時に私がAfter The Burialの大ファンだという事を知ったメンバーが、わざわざ彼らを呼びに行ってくれた。その時に聞いた『日本!実は9月に行くんだよ~』という言葉に、思わず大声で叫び散らかしてしまった(笑) 夢みたい、っていうか夢が叶った、After The Burialが日本に来るなんて……、私絶対行くからね!そう下手な英語で一気に捲し立てる私に、そこにいた皆が優しかった事に今改めて感謝したい。

このレビューを書いたその前日、BLOODAXE FESTIVALでの来日がアナウンスされた。実感が湧き、再び涙を流してしまったというのは本当の話。

 途方もない、私達からは到底想像もつかないような困難や苦しみの中から、After The Burialは再びステージへ戻ってきてくれた。昨今、解散や脱退のニュースは後を絶たない。そして海外のバンドが来日する、という事がどれほど大変かは少しだが知っているつもりだ。彼ら自身と全ての人達へ感謝の言葉をここに記したい。

本当に本当に、ありがとうございます。

 

そしてAfter The Burial、私は彼らを知る事ができた事に心から感謝しています。

素晴らしい音を、作品を、幸せな気持ちをありがとう。

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Dig Deepの最後のクレジット。

 

Trentの弾いていたJustinのギター、そしてAnthonyの言葉。

Justinはもういない、そう言う人にこそ今の彼らのショーを観てほしい。音圧やクオリティ等の技術的な面だけじゃない、今でも彼らはJustinと一緒にショーを演っている。彼が遺したモノ、そして彼の魂はAfter The Burialの曲の中に今でも確かに存在しているんだろう。ずっと、永遠に。

 

 

これを機会に、知らなかった人にも是非聴いてみてほしいです。

 

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